プレステージの新シリーズ「1VS1」。
この作品は、撮影場所の特定のヒントを鑑賞者に与えている、斬新な演出が施されている。
そこでAV女優がセックスしたであろう生々しい撮影スポットを検証していこう。
Index
現実と虚構のオーバーラップ
アダルトビデオの世界は謎に包まれた部分が多い。
なぜなら、AVはファンタジーであるため、できる限り現実世界との連続性を断ち切ろうとするからだ。
しかしながら、プレステージの作品は、多くの点でAVの虚構性を自覚し、強調するかのような演出を得意としている。
「1VS1【※演技一切無し】本能剥き出しタイマン4本番」シリーズも例外ではない。
とりわけシリーズ4つ目の作品である「ACT.04 長谷川るい」は、我々の世界に介入するアダルトビデオとして特化している。
というのも、本作品において、それぞれのシーンで異なった撮影場所を選んでいるのだが、それらの撮影場所の情報がほとんど明らかにされているのだ。
すなわち、映像内の様々なヒントを手掛かりに、我々は、彼女がセックスをした地点に赴くことができるのである。
映像内の出来事と、リニアな現実世界とのオーバーラップ。
我々はそこで、新たなエロティシズムの想像力を得ることができるだろう。
本稿は、「1VS1」において長谷川るいがセックスをした場所を徹底検証し、AVと日常世界の交錯を暴き出すことを目的とする。
「1VS1」とは?
「1VS1」シリーズは、演技なしのガチンコ・セックスにこだわった企画である。
AV女優とAV男優の生身のぶつかり合いにおける、濃厚で激しいセックス。
プレステージらしい、体液撒き散らしながらの過激な絡みは必見だ。
さらに、インタビュー・シーンが多く取り入られており、そこで明らかとなる女優たちの個性に合わせた丁寧な演出を施している。
女優ごとの演出の変化は、プレステージにしては珍しく、そこは評価すべき点であろう。
そもそもプレステージは、企画自体の演出は飛び抜けているが、それらがシリーズ化すると、すべての女優に全く同じ演出を焼き直ししていくことが多かった。
「天然成分由来○○汁100%」や「人生初・トランス状態 激イキ絶頂セックス」においては特に顕著だ。
また、他メーカーの同ジャンル企画である、エスワンの人気シリーズ「交わる体液、濃密セックス」と比較しても、演出のバリエーションが優れているといえよう。
本シリーズは、女優対男優のプレイベートのようなセックスを描写し、そしてシーンごとに異なる男優が相手となる。
個性揃いの男優が、彼女たちの特徴を抑えながら抜群のセックスを展開するのである。
AV女優×AV男優。
この掛け合わせの数とそれらの相乗効果は計り知れない。
それゆえに本シリーズは、今後のラインナップにも期待できる注目のシリーズとなるだろう。
撮影現場を検証(ACT.04 長谷川るい)
シリーズ4作目は長谷川るいを採用した作品である。
前述の通り、本作品は、それぞれのシーンの撮影場所を我々に提示している。
しかしながら、それらは具体的な場所の固有名を明記することはなく、絶妙なバランスで隠されている。
とはいえ、注意深く映像を追っていけば、我々は間違いなくその撮影スポットを割り出すことができるのである。
長谷川るいが、現にセックスをした場所。
以下で、それぞれのシーンの具体的な地名を暴き出していこう。
1.静岡県御殿場市某所
1シーン目の手がかりとなるのは、「静岡県御殿場市某所 某ビジネスホテル」というテロップと、数秒だけ映されるホテルの外観だけである。
ただ、一瞬とはいえ、ホテルの外観が写されているため、御殿場市内のビジネスホテルを全て洗い出せば、そのホテルを簡単に割り出すことができる。
そして、これは間違いなく「ホテル ルートイン御殿場」である。
外壁の特徴的な模様(スラブ位置に重ねられた緑色の横線)は、ホテルルートインのそれであることがはっきりと分かる。
そして、エントランスルーフの形状も、映像のものとホテルの外観とぴったし当てはまる。
また、ホテルに到着する前の車内でのカットに、道路の脇に掲げられた「キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所」の案内板が写っていた。
このカットから推測するに、彼女は都内から中央自動車道を使って、須走インターを経て御殿場市に降り立ったと考えられる。
ガールフレンドとともに、彼女の足取りを追ってルートインでセックスをするデートプランを考える読者は参考にされたい。
ちなみに、彼女がAV男優のしみけんとセックスをした部屋は、716号室だ。
2.廃トンネル
2シーン目の冒頭で表示されるテロップには「山梨県南都留郡山中湖村某所 人里離れた場所にある廃トンネル」と書かれている。
かなりご丁寧な住所情報だ。
申し訳程度に某所と表記されているが、明らかにここは「山伏隧道」と言われる廃トンネルである。
山中湖村から道志村へと抜ける旧道。
ちょうど村境の山伏峠の手前にある脇道を進むと、そこに現れるのがいまや廃墟となった旧トンネルの山伏隧道である。
入り口は簡易的な柵で封鎖されており、倉庫として利用されているみたいだ。
もちろんAV撮影にあたっては、トンネルの所有者に許可を得ているのであろう。
我々がこの中に入って、彼女と同じようにガールフレンドとセックスすることは避けるべきだ。
廃トンネルでのセックス。
かなりロマン的なシチュエーションであるが、ここは我慢しよう。
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3.東京都文京区後楽某所
3シーン目の撮影現場は、都内の撮影スタジオである。
正直に言って、撮影スタジオを割り出したところで、我々がそこでセックスするのは現実的ではない。
個人がスタジオを借りて女とセックスをするのは敷居が高いからだ。
本稿の趣旨に沿って言えば、スタジオよりもホテルシーンの撮影の方が、我々の妄想も膨らむ。
すなわち、その限りにおいて、本シーンは駄作であるといえよう。
ちなみに、このシーンで使われているスタジオは、「木下スタジオ 後楽A」である。
木下系列は、この作品に限らず、AV作品において度々登場する有名なスタジオだ。
特徴としては、内装の作り込みが丁寧で、かなりグレードの高いスタジオであり、本作品のような単体作品においてよく使われる。
特に後楽Aは、南面の大きなガラス窓によって、自然光が差し込み、室内が明るくなるため、映像としても爽やかな仕上がりになる。
ただ、本作品の撮影日はあいにくの天気であり、その良さがあまり活きていないのが残念だ。
4.東京都豊島区某所
最終シーンは、お待ちかねのラブホテルである。
都内のラブホテルということもあり、本作品の撮影スポットの中でも、最も手軽に訪れることのできる場所だ。
ただ、特定には少々時間がかかってしまった。
画面のテロップには、「東京都豊島区某所 某ラブホテル」と表示されている。
都内には数多くのラブホテルが存在し、豊島区に限定したところで、かなりの数が残るだろう。
そんな中で、ホテルの外観は一切映されておらず、多少共有スペース(共有廊下とエレベータ)のカットがあるくらいだ。
いままでの中でも、圧倒的に手がかりが少ない。
だが、我々も諦めることはなかった。
最終的に大きな契機となったのは、このカットである。
居酒屋の看板に表示された「串か…で…」の文字。
明らかに串カツ屋の看板である。
Googleで「豊島区 串カツ で」と検索してみると、「串かつ でんがな 池袋東口店」が見つかった。
そして、そのすぐ隣には、ラブホテル「ホテル ティファナイン」を発見。
彼女の入っていった302号室の内観写真を映像と比べると、完全に一致。
特徴的な英字プリントの壁紙がその証左である。
そう、最終撮影スポットは「ホテル ティファナイン 302号室」であったのだ。
池袋駅からも近く、この場所ならば我々も簡単に利用することができる。
我々は、彼女の吹き散らかした潮を偲んでセックスをすることができるのだ。
なんて神秘的でヴァーチャリティな体験であろう。
この世界ではないどこかを、いま、ここで感じるのである。
長谷川るいの聖地巡礼は、まず手始めにホテル ティファナインをおすすめしたい。
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まとめ
AVの世界と現実世界の交わり。
本シリーズにおいてそれは、撮影スポットという地理学的な情報が二つの世界の蝶番として機能しているのである。
長谷川るいの作品は、我々が撮影スポットへ行くことのできる最低限の情報を意図的に提示している。
これが、プレステージの仕掛けた舞台装置であるのだ。
その意味で、我々は、こちら側の世界へ開いた長谷川るいのセックス・ポイントを体験することができる。
とりわけおすすめなのが、豊島区にあるラブホテルだ。
ラブホテルは、もともとセックスをするための場所であり、その意味でも手軽に楽しめる聖地巡礼、聖地性交となるであろう。
また、ラブホテルのシーンでは、潮吹きや唾液イラマチオといった体液系のプレイも多かったため、その温もりの回顧的な情報が、我々の現実を拡張することとなる。
もちろんマニアな方には、廃トンネルやルートインといった静岡方面の聖地も巡礼して頂きたい。
彼女の足取りをたどって、静岡方面に繰り出し、そして都内のラブホテルでズコバコというデートコースこそ、本作品の鑑賞として、完成形となる。
AVを観るだけの時代から、その内側の世界に介入する時代へ。
本シリーズの今後の展開に期待しよう。
この世界とは異なる虚構の現実は、VR-仮想現実と言われる。
日常世界とは全く異なるエロティシズムを描くAV作品は、すなわちVR的であると言えるだろう。
たとえば、中出し作品の擬似精子や、レイプ・陵辱企画といった作品等々は、我々鑑賞者も、その虚構性を引き受けた上で、その物語性を楽しんでいるのである。
(我々の誰もが、本物のレイプを映像として捉えたわけではないことなど承知の上だ)
一方で、プレステージ作品の特徴は、AV世界の虚構性と現実世界の奇妙な交わりを意識的に、自己語りのように描いている。
それは、仮想現実とは異なり、AR-拡張現実であるといえよう。
拡張現実とは、現実世界に、虚構世界がオーバーラップしているイメージである。
たとえば、プレステーションVRは我々を虚構のゲーム世界へと誘うが、ポケモンGOはこの世界のリアルの上に、ポケモンの世界を重ねている。
この二つの差がVRとARの違いである。
また、ARとは、IT分野の技術革新の問題だけではなく、21世紀以降の想像力として新しい形を提示していると言われている。
例えば評論家の宇野常寛と濱野智史は『希望論―2010年代の文化と社会』(NHK出版、2012)の中で、アニメ文化における聖地巡礼もまた、ひとつのAR的な想像力であると述べている。
アニメという虚構の世界で舞台となった現実の場所が、虚構世界での出来事によって、リアルに人を集めてしまうことに、虚構と現実の混淆が認められるのだ。
長谷川るいの1VS1もまた、AVの作品において最も隠すべき情報である撮影現場を、現実世界の「いま、ここ」として描きだす。
これが、プレステージの革命的な演出技法であるといえるだろう。